« 土俵際 | Main | 組織を構成する組織のエゴはやっぱりすべてのエゴなんだろうな »

September 21, 2007

歯科技工士が背伸びして何が手に入ったのかな。 

私は歯科技工士です。 臨床の原点は飛び込みで入った歯科医院の畳1畳分も無いスペースに設けられた机に、先輩技工士と肩を寄せ合うように並んでインレーやコアーをワックスアップする事から始めました。
診療室は20畳くらいの広さがありユニットチェアーが6台ほど並んでいたと記憶しています。

印象は多い時は50くらい、平均すれば一日40ケースくらいでていたと思います。
毎日20本くらいのインレーやコアーを学校帰りの夕方からワックスアップ埋没とこなしていました。
何も考えず、ただ模型やワックスと格闘していた時代です。

爾来30年。
やっている事は同じですが、意識には様々な流れや変化がありました。

今思うことは、私がこの業界に入った時から、歯科医院の中での歯科医師の本音と建前は変わっていないと言うことです。
変化したとすれば、それはむしろ私のような歯科技工士の技工に対するスタンス、思考だと思えます。

何故、私の気持ちがあっちに振れたりこっちに偏ったりし続けてきたのかといえば、それは取りも直さず歯科医療の理念と現実との乖離、言ってみれば歯科医師の本音と建前の乖離に対して、歯科技工士としてはどう対応し受け入れればいいのか悩んだからに他なりません。

偶々私が飛び込んだ歯科医院だけがそうだったのか?
そうでない事は、他の技工士も同じように悩み、葛藤し戦ったり、身を引いて行ったりしている事からも明らかなんですが。

30年も前から歴然としていた事を、素直に受け入れるべきなのか。

歯科医師にとっての歯科医療は医療ではない、単なる業なのだ。
本音は如何にお金になるかだけであって、医療である事や患者さん、国民の健康と安心などという事は、建前も同然なんだ。

本来なら、業と割り切るべきは歯科技工士であるべきだったのだ。
だが、その悪劣な労働環境や低収入、長時間の拘束に対して、止めたい逃げ出したいという自分の気持ちを弱さと捉え、自分は医療を支えているんだ、医療としての歯科技工をやっているのだという建前を自分に信じ込ませる事で、歯科技工士の現実に迎合させてきたんじゃないか。

介護保険が制度化され、全国で介護士やヘルパーさんがたくさん生まれ、仕事についたが既に介護保険制度は破綻同然、介護士やヘルパーさんの離職が問題になっている。

歯科技工士も、制度化されてはいないが、労働環境や低収入ということなら、介護職と何も変わらない。
もっと酷いところも多数ある。 
それでも歯科技工士の離職が表面化してくるまで5年以上掛かった。
歯科技工士が過酷な状況にあるなんて、業界内のものであれば30年?いや50年以上前、歯科技工士法が制定される前から知っていたことなのだが、実際に歯科技工士の離職が歯科業界内で認識されるようになったのはここ数年の事なのだ。

いったいこの違いはなんなのだろうか。

それは、歯科医療業界の特殊性の現れだと思う。
介護保険制度の下で、介護士やヘルパーさんが離職していくのは、介護保険制度に欠陥があることの証明であり、それはそれで健全だといえる。
翻って歯科医療業界。 ここまで問題が表面化しなかったのは、歯科医師と歯科技工士、歯科衛生士の本音と建前が逆転していたからだろう。

全ての歯科医師たちが、お金のためだけに歯科医療を業として居る訳ではない事は承知している。
しかし、その様な歯科医師たちですら思うような医療としての歯科医療は出来ない状況に追い込まれてしまった。

今立ち止まり、あたりを見回したときに、真面目に取り組もうとしている歯科医師たちは、歯科医療業界がどれほど本音と建前が逆転した異常な業界になっていることに気づかれた事だろう。

本来ならば業界全体が歯科医療を尊ぶべきであったのに。

歯科技工士は物作りの原点を越えて、医療職として背伸びしすぎたのだろうか。 
そう取られてしまうところに、歯科技工士の悲しみがある。 そう思えてならない。

|

« 土俵際 | Main | 組織を構成する組織のエゴはやっぱりすべてのエゴなんだろうな »

Comments

こんばんは。
人を雇い組織を作って大きな売上を上げている
歯科技工士さんは皆、業として割り切っているように思います。
そして彼らはより早く他人よりも高い技術と知識を身につけ
他人よりも早く技工士としての壁にぶつかり
それらを乗り越えているようにも感じます。
つまり、他の何者のせいにもせず自分で道を切り開いているのだと私は感じています。
高い技術と知識でこの業界の「権威」としての地位を
結果として手に入れ、歯科医師の「権威」と呼ばれる方と
手を組み、より収入を得る方法を作り出しています。

私のように力のないものは偏った見方をしてしまいがちですが
彼らを球界の「落合選手」や「野茂選手」のように、
道を切り開いた同業者の先駆者として認めることこそ
必要なのでは?と思います。
彼らは実質、医療人としての歯科技工士の本分と
経済の2つを手にしていますから。

Posted by: ari | September 29, 2007 at 03:03 AM

ariさん、コメントありがとう。

自分、コメントを頂いても、全然レスをつけていませんねえ。
皆さんに申し訳ありません。

レスとして一本記事を書きますね。

Posted by: G3 | October 02, 2007 at 10:32 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/85649/16522892

Listed below are links to weblogs that reference 歯科技工士が背伸びして何が手に入ったのかな。 :

» ▼歯科矯正▼ [歯科矯正のブログ]
GMOマーケティング、全国の矯正歯科医院を紹介する矯正歯科医院検索サイトを開設日経プレスリリースしかし、治療を受けられる歯科医院や治療方法などに関する情報は、インターネットの検索エンジンを利用してもなかなか得にくいという現状もあります。インターネットで情報を得にくい理由として、検索結果に欲しい情報がなかなか見当たらない、SEOやスポンサーサイトの ...続きこのトピックに関する記事をすべて表示する ... [Read More]

Tracked on September 21, 2007 at 05:47 PM

» 介護保険の教科書 [介護保険の教科書]
TB失礼いたします!介護についての記事を書きました!介護について私なりにメリット、デメリットを考えて書きましたので、もし興味がありましたら遊びに来てくださいね!ではでは〜 [Read More]

Tracked on September 21, 2007 at 06:29 PM

« 土俵際 | Main | 組織を構成する組織のエゴはやっぱりすべてのエゴなんだろうな »