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January 15, 2008

自律、裁量権、医療、そして訴訟。

たまたまある衝突が起きてしまった。
人は感情的な動物である。
そしてまた自分の置かれた状況、環境からしか物が見えない。

どれだけ客観的に冷静になって議論をしようとしても、意識の根底には常に我が身の事がある。

医療制度と医療の崩壊が言われて久しい。
医療職、それも医師や歯科医師のモラルの崩壊と言う人も言うだろう。
だが、事はそう単純ではない。

江戸川乱歩賞作家、中嶋博行氏の著作に「司法戦争」がある。
日米の経済戦争を伏線に、日本の司法制度とその改革についてミステリー仕立てで書かれている。

この本の内容が、私たち歯科医療業界の住人に関係があるのかと問われれば、私は大いに関係があると答えるしかない。

日本と米国とは外交防衛経済文化の面で強固な同盟関係医にある。
自衛隊と米軍との関係も統合司令部がキャンプ座間に置かれたように一体化が進み、安保条約も安泰の様相を示している。
国会では異例の衆議院再可決で新テロ対策特別措置法が施行され、対テロ名目で自衛隊の戦争参加、兵站業務が再開される。

それに先立つ事であるが、日本はその国益を日米同盟というよりも、米国の従属国、奴隷国のように差出、市場開放の名目、構造改革の名目であらゆる分野の権限や利益を米国に差し出している事に対して、誰も問題視していない。

平成16年5月21日に「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立した。
「司法戦争」で真のテーマとなったのは、実はこの裁判員制度、米国で言えば陪審員制度の導入が、実は構造改革名目の米国の圧力が、日本の三権のうち、司法を支配する、市場化し蹂躙する恐れがあると言う事の警告だったのである。

米国ははっきり言って訴訟社会、濫訴社会である。 何百万という弁護士が鵜の目鷹の目で金になる訴訟を狙っている。 米国であぶれた弁護士達が日本の司法制度裁判制度を宝の山として乗り込んでくれば、日本でもマクドナルドのコーヒーで火傷をしたといっては企業を訴え、道で肩がぶつかったと言っては訴える。
実際に事故や怪我を負う事なれば、相手だけではなく、その周り、およそ目に付く難癖をつけられるもの全てが訴訟の対象になるだろう。

医療や年金保険そのものも、米国の企業に牛耳られてきているが、考えてみれば医療ほど訴訟の対象として美味しいものはないのではないだろうか。

国民を守るのも、奪うのも全て米国式利益追求の図式になれば、日本の医療は財政的な面だけではなく、医療の本質そのものから瓦解しかねないだろう。

訴訟社会、利益追求の社会に対して、医師や歯科医師は何の守りも出来ていない。

医療の崩壊、医療職の逃避はなにも経済的な問題だけで起きているのではない。
今でも医療過誤医療ミスに対する訴訟が頻発しているが、これも大きな圧力となっているし、厚生労働省や被保険者側からの有形無形の圧力、時に裁量権をも奪う制度の壁などが複雑に絡んで、医師や歯科医師に絶望感と焦燥感とを抱かせ、追い詰めているのである。

私たち医療職の一人一人は、それぞれの環境、条件の下で、患者さんと向き合い、従業員を抱え家族を養っているのだ。
しかし、その事は医療制度や構造改革や様々な圧力と対峙せねばならない時には、難しい事ではあるが切り離して考えねばならない。

みな歯科の会員一人一人も、実際は患者さんを抱え、家族やスタッフを抱えて社会的にも経済的にも追い詰められている弱い人間の一人に過ぎない。
どこまでも自分や周りを犠牲にして意志を貫き通す事は大変に難しい。

しかし、我々がどう嘆き、足掻こうとも濫訴の社会、制度の改変と締め付けは間違いなく襲ってくる。


それに対処する方法は一つしかない。
医療が国民から信頼を取り戻す事だ。 
訴訟の前に患者さん、国民との医療の信頼を作る事だ。
我が身の窮状、診療報酬の厳しさを言う前に、信頼される医療を行う事だ。

様々なバックボーンを抱え追い詰められた医療者には、恨み辛みもあるだろうが、それを同業者に向けても互いが傷つくばかりだろう。
法や制度、訴訟でがんじがらめにされる前に、私たちは自律自浄を自らに果たす事で、医療の信を世に問い、医師や歯科医師の本来の裁量権と信頼とを取り戻すしかない。

これから向える痛みは確かに恐ろしい。
しかし、こう信じなければならない。
「自分が生き残る為とかではなく
医療制度と医師の歯科医師の自立と尊厳を守る事こそが
結果的に国民の生命を保証するのだと」

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