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August 11, 2008

盛況お礼 歯科技工士シンポジウム 

8月3日に世田谷区民館 三茶しゃれなあどにて行なわれた「歯科技工士シンポジウム」には猛暑の中、多数の参加を賜り、厚くお礼申し上げます。

金田衆議院議員、田辺記者、宇佐美保団連副会長、川上弁護士には大変貴重なお話や提言をいただき感謝に耐えません。
また、脇本代表も何時にもまして強く歯科技工士が迎えた危機を訴えて心に迫るものがありました。

蓋を開けてみれば100名を越す参加者の三分の一が歯科医師達と、予想以上に歯科医師の出席が多く、現場の歯科医師達にも歯科技工士たちの危機的な状況がひしと伝わったであろう事を願わずに入られません。


歯科医師、歯科医師会、保団連、政府、所轄官庁、歯科技工所協会、ラボ経営者、そして個人の歯科技工士と、
歯科医療の現状に対する認識や思惑は様々でありましょうが、現実に歯科大学の定員割れや募集減少に先立つ事10数年の歯科技工士業界の崩壊、構成年齢の高齢化、空洞化、更には有資格者の大幅な減少と、歯科医師会と歯科技工士会の対立、歯科医師と歯科技工士の相互不信、料金問題や待遇、立場での対立が引き起こしてきた弊害は、国が進める財政再建と構造改革の流とシンクロして、歯科技工業と歯科技工士免許の双方とを、意味のなさない過去の遺物へと追いやろうとしている訳であります。

その事を、端的に知らしめたのが、保団連宇佐美副会長による、「歯科技工助手制度」への言及でありましょう。
日本歯科医師会の国会代表とも言うべき参議院議員石井みどり氏との話題に上がったと言う事は、政官業の三位一体で事が動き出している、根回しが進んでいると言う事実を想起させる発言でありました。

海外委託を厚生労働省として容認するが如き「平成17年度厚生労働省歯科保険課長通達」で示された通り、
歯科医師の裁量権と歯科技工士法の矛盾とを容認し、監督官庁としての役割放棄、責任の限界を認めたわけですが、その延長線上に、上記したような関係者、それも有形無形での利害関係者の思惑だけで、昭和30年法律第168号として発布された現行法である歯科技工士法は、空洞化形骸化されようとしていることが、裁判の訴因や争点以上にクローズアップされてきたのであります。

この事はこの先どのように影響してくるのでありましょうか。

2500人を超える歯科医師国家試験合格者の全てが、卒業後に開業する訳ではありませんが、それでも年間の歯科医院開設数は2400程度、廃業や廃院は1500程度と、差し引き年に1000軒前後の歯科医院が増えている計算になります。

しかし、歯科医院経営の半分は、歯科保険補綴に依存していることがみな歯科の集計でも明らかになっていますように、日本の歯科医院から補綴と歯科技工とを切り離せば、大半の歯科医院が行き詰まるものと思われます。

これだけ歯科医師数と歯科医院数が増加しながら、年間の歯科医療費に大きな成長が見られない理由は、一つは歯科医療費と言うパイを大まかに言って歯科医師歯科技工士歯科衛生士で分けたとして、歯科医師数のみが増え、その分、歯科技工士歯科衛生士の廃業や離職がバランスしている事、歯科技工料金や歯科衛生士が関わる診療報酬が低料金に押えられ、本来歯科技工士の収入に成るべき部分が大きく歯科医師側に移動していること、さらには歯科医師本人が行うようになっていること、都市部などでは保険以外に歯科医師誘発需要が惹起されていることなどが、総枠の蓋で押えられていながら歯科医師数と歯科医院数だけが膨張しながらも、歯科医療費は国の誘導する歯科医療費を大きくオーバーする事無く、一見安定しているかのような表面を見せる結果になっているのでしょう。

しかし、この安定も今や大きく崩れる寸前であろうと思います。
この5年から10年で、歯科技工士の構成年代から20代から30代前半までの若手がごっそり消えました。
今や歯科技工士の中心年代は50代を超えています。 その高齢化した歯科技工士も、昨今の患者減、補綴減、キンパラ高騰による補綴需要の変化で、壊滅的なダメージを受けており、倒れる寸前であります。


そこに、歯科技工士免許証のある有資格者に依存しない、歯科医療と補綴治療とを願望とする動き、思惑が強く台頭する理由があるわけであります。

それが、石井みどり議員や厚生労働省、大手ラボ経営者の一体とした動きの背景にあるのでしょう。


歯科技工士法は第17条で、業務上の禁止行為として「歯科医師又は歯科技工士でなければ、業として歯科技工を行つてはならない。」と明記しております。

そこに歯科医師の裁量権拡大解釈やその延長線上での「歯科技工助手制度」などが設けられる事態になれば、
歯科技工士法そのものが空文化形骸化するのは目に見えているわけであります。
この様な姑息な手段を取ると言うのであれば、いっそ歯科技工士法を廃止してくれた方がどれほどすっきりするか分かりません。

しかし、それをせず、法をゆがめる権利と義務とを恣意的に利用すると言うことの意味は、一気に改廃する事で起こる現場の混乱や国民世論の反発を恐れての事であろうと思います。

ですが、歯科技工助手制度が公の席で国会議員や組織関係者から出されるようになれば、すでに既成事実のなっている歯科技工士専門学校での定員割れと志望者減に拍車をかけ、中途退学者の増加が加速されるのではないかと懸念される事であります。

100%歯科技工士を必要とする補綴の無い歯科医療が存在しえるのかを、私は強く歯科医療関係者の一人一人に問うてみたいのであります。

歯科技工士専門学校のような歯科技工士の養成機関、システムと言うもの、また、歯科技工の知識や技術がが一朝一夕に生み出せるもの身に付くものではない事は、誰の目にも明らかです。
それが分かっていながら、誰一人この問題に対してはっきりとした意見や行動を示すものが居ないということが、
結果的に国民不在、自己のエゴでしか社会を見ることが出来ない歯科医療関係者の実態を露にしていると言えます。


現実を見つめ、多少の想像力を持ち、何よりも国民生活に於ける歯科医療の義務や価値がわかる人であれば、
この問題から目を背け、放置する事無く、即、行動に移していただきたいと心から願います。
 

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