消される一方で誘導される報道もある。 読売ウイークリーの記事に無いもの。
読売ウイークリーが休刊になることはとても残念です。
その読売ウイークリーの最新号の記事に、歯科診療報酬審査の記事が載っています。
これ、一般の人にはチンプンカンプンだと思います。
一応、歯科業界に30年以上居る私にしても、記事の内容にあるような医療保健制度と診療報酬についてより深く知り、考えるようになったのはみんなの歯科ネットワークに入会したここ2年ほどの事です。
この記事の内容も、読めば如何にもと思えますし、歯科医院の裏事情は記事に出ているような部分だけじゃない事も知りうる立場ではあります。
ご存知かと思いますが私は神奈川県で二十歳のときから歯科技工士をやっています。
ラボを開業して既に23年以上、今ほど酷い業績になったことはありません。
歯科技工の衰退をもろに感じている所ですが、事、保険診療の補綴が激減してきた事の理由に、ウイークリーの記事にある大阪と神奈川とでは33倍にもなる審査査定率が影響している事は在りだと思えます。
只、記事自体に何か意図が隠されていると言う超人先生の指摘も、先ず間違いなく在りでしょう。
大阪の審査が特区と呼ばれ、他県の歯科医師から羨まれるのにも理由は在るでしょう。
そして神奈川が実験地と呼ばれるのにも理由はあります、いや理由と言うより実験されていると言う事実が在ります。 それが神奈川ルールです。 その存在は国会でも舛添厚生労働大臣が問弁しているように否定できないものです。 しかし誰もそれを更生しようとも正そうともしていません。
神奈川ルールの存在と厳しい査定率が神奈川県民にどんな影響を及ぼしているのか、誰も検証していません。
一つには歯科医師側にいえない事情が存在します。 例えば件の神奈川ルールと言うものは神奈川県歯科医師会が基金側と取り交わしたルールでもあるからです。 自分達の首をしめるルールを認めていたんです。
これじゃ表立って抗議など出来ませんよね。
あおりを食らうのは正に保険でよい歯科医療を受けられるべき県民であるわけです。
具体的に言えば、保険診療が受けられなくなっています。 いままで当然であった治療がいきなり突き返しになれば、歯科医師はその治療を患者さんには施しません。
また、選べるにしても診療報酬自体が低くて、やれば赤字が確実であれば、やはり歯科医師は避けるるようになります。 そして保険補綴で多用されてきた代用合金である金銀パラジウム合金の価格が暴騰した事も、歯科医師の保険診療を萎縮させていました。
患者さんはそれと知らずに受けられる保険診療が神奈川県であれば関東厚生局の技官が神奈川に押し付けたルールによって狭められているのです。
表面的に何も変化がないように見えますが、受診抑制に繋がっていますし、景気の悪化が覆い隠している部分も在ります。
そして歯科には自費と言う方法が存在する事も、そして歯科医師の多くは保険診療よりも自費診療を行ないたいのだと言う事も、ベールを厚くしています。
社会保険庁解体の理由になった消えた年金ですが、今も何一つ解明されていません。
むしろ、今までは問題無いと思われた厚生年金にも、知らないうちに操作され受け取れる年金金額が減額されていたと言うケースが暴露されています。
本来国民や県民が受けられるべき保険が受けられ無い。
そう言う意味では、年金と国民医療保険とで社会保険庁内部での部署は違うかもしれませんが、お役所の犯罪行為と言う意味では同じ結果になるのです。
年金の場合、消えたり時効になった分は国は支払う事はしません。
国の負担はその分減ると言う事です。
診療報酬には青本と言う全国統一のルールがありながら神奈川が酷いのは、そうすれば受診抑制につながり保険料支払いの額が当然ですが減らせるからです。
今はまだ神奈川の特別なルールのように見えても、それが医療費削減や受診抑制、歯科医療職削減に繋がるのなら、国側はそれを全国ルールにするだけです。
舛添厚生労働大臣が全国一律であるべき国家の制度である診療報酬の基準が、特定の県に於ける診療報酬審査に特定のルールが存在する事を認め、更生を約したはずなのに、実体は何一つ改められる事無く、今も続いている事実を報道していながら、この記事からは33倍と突出した神奈川の異常さは棚に上げて、あたかも神奈川県には33倍の不正請求が発生しているかのように読めるのは何故でしょう?
大阪の少なさも、本当は大きな問題でもあります。 それはそれで追求し訂正されるべきですが、では神奈川の審査の査定率を基準に全国平均値を引き上げるべきだと言うのであれば、これは正に官の横暴、お上の暴走ですよ。
日本の歯科医療の実体には、摘発されるような不正請求の横行も実際に在ります。
しかし、私の目から見れば、歯科医療行政でもっと問題にされるべきは医療の質が一切不問のまま、レセプト上の不正追求だけで歯科医療を追い詰めようとしている事です。
社会保険庁の解体と、地方厚生局の発足は、一見すると行政の反省からの事に見えますが、日本歯科医師会がこれまでの数々の不祥事に、何一つ反省も無く、変わらなかったように、行政側も歯科医療に対する姿勢を何一つ変えていない、いやむしろ攻勢を強める一環としてのこの記事であると読み解くべきでしょう。
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