大変だから大変だ
MIXIの日記で、ねこちゃんからコメントが入りました。
私の視点が、あまりにも偏っているものですから、更に言えば自助努力を何一つせず、全ての原因や責任を他者や制度や政治に求めているからでしょう。
その点は否定しませんし、開き直って続けさせていただきたいと思います。
私は何を見ているのでしょう。
毎日毎日ネットや新聞や雑誌からの情報の洪水に、溺れるどころか自分から飛び込み、さらに混乱して深みに沈んでいるだけなのかもしれません。
今の日本の状況が、誰にとって良いと言えるのか、一言で語れる人は居ないでしょう。
景気がよかったと言う表現にしても、今となってはそれも実体など無い、金融工学やらが生み出したバブル同然であった事が理解できると思います。
同じく政治の状況にしても、これだけ総理大臣や内閣がころころ替わり、もう2代前三代前の総理も他の大臣の名前も役職も思い出せないと言うのに、この国の行政の根幹は微動だにせず今日も私達は一見すれば安心安全に暮らしているように見えます。
だから、明日も変わらない、1年先5年先100年先も変わらないと言えるのでしょうか。
人は環境に慣れてしまうものなのでしょう。
そしてオウムや数々のカルトを見るまでも無く、洗脳されやすいのだと思います。
日本はまだ世界でも安全安心な国の筆頭でしょう。
大変な事があちこちで起きていたにしても、それはその人個人にとって大変なことであって、他の人には関係ないことなのでしょう。
関係ない事が安全安心なのだと言い換える事も出来ます。
1999年には2000年問題であたふたしていました。
過ぎてしまえば何事も無く杞憂だったと分ります。
9.11テロも、TVで繰り返しジャンボジェットがWTCに突っ込む映像を見せられ、更にビン・ラディーンとアルカイダの関連を繰り返し見せられて、その前の湾岸戦争やフセインを殺すに至ったイラク戦争を当然の正義と刷り込まれていました。
日本人には自ら血を流した訳でもなく、痛みも何も無く、只国が戦費を負担し自衛隊を出して行くのを、そんなものかと見ていたのです。
小泉と竹中を中心とした構造改革が、その間に日本の中で何をしていたかが、段々分ってきていると思います。
バラバラに一見何の関係も無い全国各地の個人個人が、それぞれ訳も分らないままに、大変な状況に置かれていると言うことは、確かです。
大変さと言う事象は、その人その人で違うのでしょうから、個人が悪いのだと言われたら、大方の人は黙り込むしかないでしょう。
そしてそれが、結果的に問題を分りづらくさせ、総理大臣や内閣がころころ変わっても、とりあえず国は表面的に安全安心な姿を見せているのでしょう。
「大変だから大変だ」
これは昨日クマザワ書店で買ってきた保坂和志さんの「小説を書きあぐねている人のための小説入門」の中の一文です。
例として上げられている話ですが、ある人が具合が悪くなった飼い猫の事で作者に「大変だ」と伝えてくる。
勿論、ある人はご主人にも「大変だ」と伝えたのですが、そのご主人は仕事柄か「どう大変なのか、論理的に説明してくれ」と答えたのだそうです。
これを読んで、皆さんはどううけとるのでしょうか。
作者はこう書いています。
しかしこういう事は、論理的に説明できない。 (中略) 毎日面倒を見ている飼い主が「大変だ」と判断すれば、それは「大変」なのだ。
この旦那さんは大学教授だと言う。 論理的に説明されたものしか納得できない「社会化された人間」なのだろうと作者は言う。
であるから「大変だから大変」だと言う事が理解できないと。
続けて「大変だから大変」だと直感的な認識が非常に多くの情報量に裏打ちされていることは、(中略)かなり理解されてきているが、そうではない思考様式でもものを考える人がまだまだ多いということだろうと。
うなずける所も多い。
人間コンピューターではないから0と1とを組みあわせてモノを考え理解するとかだけではなく、まったく違った事象を直感的に組み合わせて理解する事だってできるし、それがあるから
科学や医学は発展してきたのだとも思う。
作者は小説とは何かについて一つの答えをその例に見ている。
私は私でこの国の混迷や国民の漠とした不安や圧迫感に対して、一つの答えを見たように感じる。
日本国民の全てが、同じ人生経験や生活環境ではないのだから、直感を左右する情報量にも理解力にも当然差がある。
その差というものが、もしかしたら総理や内閣がころころ変わる事を許し、ぬえのような官僚制度、官僚支配国家を存在を許しているのではないか。
「大変なのは大変」
国民のそれぞれがそれぞれの立場や環境で直面する「大変」。
そしてその背景にある背景輻射のような「大変」
その両者を繋げる直観力を、私は共感として感じ取っていただければと思う。
The comments to this entry are closed.
Comments