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July 27, 2009

数字の不思議 実は足りてる?歯科技工士の就労数

歯科技工士の年齢構成がいびつになっている事は、多少は歯科問題に関心を向けている人なら、皆さんご存知であろうと思います。
ミクシイのがんばれ歯科技工士コミュにあるトピックの一つでも、ある方がコメントされています。
主旨は50歳以上が12.411人と就業歯科技工士の35.1%を占めており、このまま歯科技工士の高齢化がスライドすれば、この世代がリタイアする数十年後の人材不足は論ずるまでもないと。

続けて、

>>厚生労働省医政局歯科保健課はそれを知っていながら、相変わらず、何もしない。

とされている。
そこで私は思う。

いや、対策はしているのじゃないでしょうかと。 
それが、訴訟に於ける厚生労働省と日技の頑ななまでの態度に表れているように思います。
日本歯科技工士会は、訴訟原告団からの進行協議参加への呼びかけに対しても、すでに厚生労働省と緊密な協議を重ねているから、裁判所の呼びかけに応じる必要は無いと回答されているくらいです。
それくらい自信満々なのですから、海外委託に限らず、歯科技工士の資格問題も、就労歯科技工士の高齢かも想定の範囲、当然、検討のうえでの将来の見通しでしょう。

さて、この35.1%をしめる歯科技工士が一番得意としてきた(品質は問わないが)のが所謂保険の銀歯や硬質レジン前装冠じゃないでしょうか。
それ+メタルボンド。
歯科医院の食い扶持の大半が、保険歯科医療と51年なんとかを裏づけとする自費診療でしょう。それはさておき。


保険義歯を専門にやってきた人も多いと思いますが、多かったのは前者でしょう。
私もそうです。

みな歯科をご存知だと思いますが、その中でオープンWIKIにある「歯科技工士の高齢化ますます進む 」をご覧ください。
http://www.minnanoshika.net/wiki/index.php?%BB%F5%B2%CA%B5%BB%B9%A9%BB%CE%A4%CE%B9%E2%CE%F0%B2%BD%A4%DE%A4%B9%A4%DE%A4%B9%BF%CA%A4%E0

資料作成者のチューさんと私とがコメント残していますが、ここでチューさんが示すように、歯冠補綴処置が減少している((単純インレーは、ここ10年で550万→180万件、全部鋳造冠は、ここ10年で2300万→1800万件、前装鋳造冠は、ここ10年で1100万→800万件に・・・中道先生の論文より)これが影響しないわけが無いのです。

特に前者への影響たるや甚大です。 主に悲鳴を上げているのはこっちでしょう。
中道論文でそれが検証されたようにも思えます。
私一人の減少であれば、自分の問題ですが、中道先生の指摘どうりであれば、全体の問題でもあることがご理解いただけるでしょう。

義歯中心にやっている同級に聞いたところ、仕事量の落ち込みは私ほどひどく無いといいますから、技工料金の事は置いといても、仕事さえあれば問題ないと思うような歯科技工士には、変化など感じられない事もありえたようです。

チューさんが言うように、虫歯自体が減っているでしょうし、人口も減っています。
既に治療が終わっている患者さんも当然ですが増えるわけです。
そして患者さん自身、銀歯を嫌がると言うのもあります。
レジン充填であれば形成や印象に煩わされる事もありません。
また、貴金属が投機の対象になり、パラジウムなどが高騰して、歯科医院の多くは金パラ価格が逆ザヤになり、歯科技工士への価格転嫁だけでは利益も無いことから、
保険治療の選択肢の中で銀歯が避けられてしまったところも否定できないでしょう。

そういう意味ではインレーやクラウンの銀歯は自然に減るべきホテツなのでしょう。
そういう視点で必要な歯科技工士を見れば、歯科技工士は過剰だと思えます。

悲しい事に、保険制度のルールで行える補綴治療は銀歯中心と義歯しかありません。

厚生労働省の歯科担当者は当然ですが保険制度の内容を熟知されているでしょうから、また、中道先生が指摘するような補綴内容の変化もデータを持って分析されているのでしょうから、銀歯ばかりやっていれば歯科技工士は多すぎるしいずれ淘汰されるものと見ているでしょう。

また、技工料金については市場に任せていると、診療報酬もその市場の料金を反映させているとの回答を絶対に撤回はしないでしょうから、結果的に歯科技工士を使い捨てにし、安い料金で働かせる事でこれまでの保険制度を低負担で行いえた事実を、当然の事、制度や行政側の立派な実績だと国民には言い続けるでしょう。

そんなこんなで高齢化した歯科技工士は既に時代の流れから完全に外れているのかもしれません。

情念党で紹介されている平成20年度保健・衛生行政業務報告によれば、

平成20年保健・衛生行政業務報告の概況が7月17日、厚労省より公表され、平
成20年末の就業歯科衛生士は9万6442人と、前回調査の平成18年の8万6939人
より9503人、10.9%増加した。歯科技工士は3万5337人と、同3万5147人より
190人、0.5%増加したが、歯科技工所は1万9369カ所と同1万9435カ所より66カ
所、0.3%減少した。
また、10年前の平成10年と比較すると、歯科衛生士は6万1331人から3万511人
増加。歯科技工士は3万6569人から1232人減少し、歯科技工所は1万7648カ所
から1721カ所増加した。

とあります。

私は数字に強くないし、データの分析も苦手ですが、これまたみな歯科チューさんの資料を参考に、あれこれいじくって見ます。

平成10年や平成20年に卒業と言うと入学はそれぞれ平成8年と平成18年かな。
その年度ごとの卒業者数と国家試験受験者数、合格者数がちと分からない。 分かるのは平成17年の受験者2292名、合格者2263名。他のも調べよう。
平成8年から平成18年までの入学者が回りまわって平成10年から平成20年までの卒業生になり国家試験合格者になる・・・わけないな。
それでも入学者の8割は国家試験に合格するまでいったとしよう。

29175人の8割が国家試験を取ったとする。
23340人だ。
とすれば、単純に考えれば3万6569人+2万3340人、合計5万9909人になって無いとおかしい。
引退や廃業、病死や事故死など自然減もあるだろうが、養成数や国家資格合格者数からすれば、病死や事故死は少ないだろうから、それを差し引いても、差し引くまでもなくか、1232人の減少という事は、養成と言うか供給がまったく無いに等しいか、それを越えて減少していると言うことだろう。

単純インレーは、ここ10年で550万→180万件、全部鋳造冠は、ここ10年で2300万→1800万件、前装鋳造冠は、ここ10年で1100万→800万件に

何人の歯科技工士が分担して行えばいいのか簡単には計算できないような気もしますし、他にも複雑なインレーや、義歯も在りますがここは単純に中道先生のデータを足して、その年度の歯科技工士数で割ってみます。
550万+2300万+1100万=3950万÷36569=1080本 365日、毎日約3本です。 もっとやってきたような気がするけど、まあ計算だから。

同じく
180万+1800万+800万イ=2780万÷35337=787本 

ざっと年間293本減り、一日に2本になったようなものです。
実感として一日2本くらいしかないので、大雑把な計算ですが実態を表しているような気がします。

わたしゃ計算が得意じゃないので、現在の補綴総数を何人の歯科技工士でやればちょうどいいのかはじき出せませんが、数をこなして料金の安い分をカバーすると言うことは、事銀歯に関してはもう無理だと思います。

仮に10年前に毎日3本やっていたのが、単純インレー、クラウン、前装冠の3つだったとします。
技工料金はそれぞれ1000円、2400円、6000円とします。
一日の売り上げは9400円に過ぎません。 職人さんの一日の手間賃より安いのじゃないでしょうか。
ワンマンラボではその程度しか仕事が無いと言うこともあったのです。

それが今では2本になっているわけです。
組み合わせにもよりますが、最低2000円、高くても12000円でしかありません。
余裕で喰えるとは言えませんね。 さてどうするか。

営業力に物を言わせるとか、事業と人と機材を集約して例えば某大手のようにクラウンセンターとして、保健の銀歯に特化してやれば、一見すれば企業としての利益は出るのかもしれません。

しかし、それも安い人件費で済む有資格者が存在してこそです。
離職者が相次ぎ新卒の手当ても侭なら無い今、ワンマンラボや零細ラボには受注自体が存在せず、営業力で数をかき集めても今度は人がいない。

診療報酬が実勢の委託技工料金に沿ったものだとは、厚生労働省の説明であり、岩澤さんの論文にもあるとおりですが、その通りであれば、何もしない事はいわば国策でもあるわけです。
そうする事で、歯科医療費のコストは下げられますし、国負担、保険者負担も実勢価格の低下に伴って、負担を減らせます。
それでも医科や介護の分野で毎年増える社会保障費の増加を抑えるためには、自費の特権を手放さない歯科医師会や歯科医師をターゲットにして、歯科の分野は保健ホテツを槍玉にしてでも、反論や反対をされにくいと言うこともあって、徹底的な診療報酬の厳格化、保健ルールの締め付けが行われいるのでしょう。

言ってみればお上も保険者も等の歯科医師も、自然減に輪をかけて保健ホテツの縮小に進んでいるようなものです。

この現状に必要な歯科技工士の適正数と言うものが、私には思い浮かばないのです。

昔は補綴総数が多かったので、診療報酬や技工料金が安くてもなんとかぼろを出さずに回ってきましたが、補綴総数が7割がたに減少し、診療報酬より2割、事によっては半分も無い技工料金である現在は、一人当たりの数を10年前と同じにすればいいことなのかと言うなら、歯科技工士は今でも過剰だと取られかねません。 だってやる数は減っているのですから。

歯科技工士が足りないと言う議論は、補綴総数が10年前と同じでなければおかしいわけです。

現在の人数が危機的に少ないと言うのであれば、では10年前は危機的ではなかったのかと皆さんに問いたい質問です。

補綴総数の減少、若年歯科技工士の早期離職、歯科技工専門学校の存続の危機。

日本歯科技工士会は会員に対しても、このような現状を説明し、場合によっては業態転換の必要性などを会員にも伝え、また国民的なコンセンサスを得るための努力などを行ってきたのでしょうか。
会長一人が国会議員になる事が、その努力なんだなどとは言ってほしくありません。


追記

加藤さんのブログも更新されてます。
世界恐慌当時の株価推移が貼られていますね。

その後日本は資源を持たないくせに、精神論だけで戦争に勝てると戦争に突っ込んでいってしまった。
私の住む町の周辺にも、今も戦争の後は数多く残ります。
相模原市は軍都と呼ばれていましたし、今も相模総合補給廠、キャンプ座間、相模原住宅地区があり、城山町のダム湖に登れば戦中に墜落した日本軍機の記念碑があります。
愛川町にも飛行場があったことは若い人には驚きでしょうか。

日本は独立国かもしれませんが、軍事的には今も占領下でしょう。

ともかく、加藤さんが示すように、景気の底はまだ先でしょう。 日銀などの景気判断には希望的観測もあるし、国民の意識を盛り上げたいと言う意味もあると思います。

国民の金融資産と言う、謂わば国の振り出す小切手や手形の裏打ちとなるべきものが、このまま米国資本に献上されてしまえば、幾らなんでも1000兆円を超す赤字や借金をチャラにも出来ず、残す手段は昭和27年に戦争国債などの国民に対する借金をチャラにした手段、つまり貯金封鎖しか残っていないような気がします。

過去のチャートをトレースするような今の進行状態に、備えあれば憂いなしです・・・・・それも無いけど。

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