雑感
今、ネットで発言している人たちの書き込みから受ける印象として、歯科技工士が前面に出てホテツ物の良さを売り込んでほしい、社会や患者さんに言ってほしいと言う願望を感じます。
篠田先生が真実と言うHNで吠えろに書いているようですが、また、先生のHPでCAD/CAMの展開を紹介されていますが、これを、スタンダードにしたいと言う事なのでしょう。
そして、それを歯科医師だけがネットなどで発信しても、歯科技工士がなかなかついてこないと感じられているのではないかと。
特に、HPやブログを持って、積極的に発信している人たちに、何故か旧来の頑固さを見て呆れておられるのか。
医療や国の制度としての医療保険があり、歯科医院の大半が保険医を標榜している中で、保険歯科医療の治療内容に対して、不満不備を言うのは仕方のない事ですが、最新のホテツ治療や技工技術に対して国民的な理解やコンセンサスを得るためにと言う事で、進められているのでしょうが、それが結局保険歯科医療を否定するしかない事が、患者さんの気持ちからすれば何が正しいのかと思ってしまうかもしれません。
国や厚労省は、社会保障の範疇で保険制度を維持し、それ以外の事は医師や歯科医師の裁量でやってくれとの立場ですが、医科と歯科とでは、歯科は医科よりも心持ち見て見ぬふりをされているような。
日本の歯科医療が、遅れていると言うのは否定できません。
しかし、だからもういらないとはならないでしょう。
それが何故かと言う部分に、正直に切り込まないままに、良いものだから、外国ではこれが当然だからと言うのもちょっと違うような気もします。
と言うのも、その国の社会基盤や国民や制度の在り方が、どこも一様ではないからです。
日本の制度が悪い、歯科に限って言えば診療で出来る事の内容が悪いと決めつける事は簡単ですが、何を基準とするのかで、上に行ったり下に行ったりは簡単に起きる事です。
今や国力で日本を凌駕するようになった中国にしても、あまりにも広く、貧富の差も巨大なものがあり、底辺の者たちにはそもそも医療の基盤など用意されていません。
それは何も中国に限った話ではなく、タイやベトナムやカンボジア、フィリピンだって同じです。
日本はいつでもどこでも何の不便も無く医療を受けられると言う意味では、諸外国と比べようもない位、安心安全な国なんです。
日本の歯科医療が遅れているのか、或いは進んでいるのかとの命題もありますが、では、歯科医療がその国の国民生活にどれほど溶け込んでいるのかと言うような視点も必要かと思います。
そう言う視点で見れば、日本は世界でもトップクラス、先進国でも成功した国家のひとつでしょう。
しかもその基盤は1938年施行の国民健康保険法にまで遡る訳です。
未だ、歯科医療も受けられない国や地域が多数ある中で、日本はこんな昔から医療を国民生活の基盤とする意識が国には在ったと言う事です。
私は国や厚労省の立場からすれば、社会基盤を維持する制度設計と運営さえやっていればいい、責任は果たしているのに、そこを理解しない国民や医療者の中から、本来、歯科医療者に在る責任の部分までを、国や厚労省に付回してくるとは何事かと言うような考えが無いとも思えません。
実際の国民の命に関わるような部分には、結構手厚く手当てをしていると思いますが、歯科はそこまで大事にはされていないのでしょう。
社会保障費がこれだけ上がってきながら、歯科医療費は物価上昇分も増えてはいません。
自費が増えていると言っても、現実は保険診療が大半を占めたままです。
保険ホテツの内実に不平や不満が歯科医療当事者から上がっていても、患者さん自身には診療内容の真実すら伝わっていませんでした。
不平不満が充満していても、現に今も歯科医師は増え続け、歯科診療所も掃いて捨てるほど乱立しているところもあります。
そして今、差別化の為でしょうか、グローバル化や世界の潮流だと言う事で、フレシキブルデンチャーやオールセラミックスを、歯医者さんだけが言っても国民に届かない、なら、歯科技工士がもっと患者さんに対して直接売り込みに動いて欲しいと言うような歯医者さん達の無言の圧力を感じています。
分からなくもありません。
しかし、これまでであれば、歯科技工士達が表だって患者さん相手に売り込みなどをすると、歯医者さんたちは領分を侵害されたとばかり、湯気を立てて怒ったものですが。
歯科医療制度で言えば、世界でも有数のものが存在しながら、歯科業界内部では今もって医療とそれ以外のものとが複雑に絡み合ってせめぎ合っているような気がします。
保険制度に安住し続けてきたからだとの指摘もあるでしょう。
しかしそれは歯科技工士だけの事ではありません。
いろんな意味で弱い立場の歯科技工士に、負担が集積してきたと思います。
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Comments
セラミッククラウンを保険に収載するか、補綴を保険から外すか?
保険収載にしたらドイツみたいに破綻する可能性は高い というか無理だろう。
保険から外したら低所得者が・・・・・て言われるけど
低所得者のために医療従事者が犠牲になってもよいのか?
保険制度そのものの仕組みによって医療従事者や介護従事者が犠牲になる必要は無い。
安い料金で医療や介護が受けられることが当たり前だと思っている国民に
知らしめるためにも壊れてしまった方が良い。
困らなければ分からない。
一患者と名乗る人は歯科でビジネスを考えているのかもしれないので、あそこでは何も書かない。
篠田先生の言うことは間違ってはいない。
レイヤリングやステインとか書いているけどイメージ出来ていない技工士は大勢居る。
そんなところで書いても時間の無駄。
アホが叩きに来るだけ。
Posted by: nao-kinseizin(vrsca) | April 28, 2010 06:48 PM
確かに大部分の技工士の方は今海外で何が起きているのか、私が何をしようとしてるのか理解ができないようです。どうやら無駄のようですね。
Posted by: 篠田鉄郎 | May 02, 2010 08:13 PM
篠田先生>
分からなくもないのです。 そして、私が一歩踏み出す事が出来ないのは、資金の面が一番大きいです。
それでも、中国などにばかり大規模な歯科技工所が出来るのはなぜなのかなと疑問も持ちます。
中国は法律があっても、それより上位のものが存在します。
それが党であり、人民解放軍の存在も脅威です。
改革開放の掛け声に反応した欧米の資本が、中国に資本や技術を投下し、中国の人民もただ、安い労働力を提供するだけではなく、中国人の中からも独自ブランドを立ち上げるなどして、ものすごい成功者や富豪が生まれている訳ですが。
国内には、機械化が進んだ中国に在るような大規模なラボは無いかもしれません。
それだけのマーケットが無かったのだから仕方がありません。
ですが、CAD/CAMに限らず最新の技工物作成の受け皿がまったくない訳でもありません。
日本の歯科医療が、そのような最新の歯科技工所を育てる努力をしてきたとは思えません。 政治も政府も同じです。
それでも一部の歯科技工所は独自に取り組んできた訳です。
もっと評価したり、国を挙げての後押しもあればと思います。
世界で起きている事、中国の事、多少でも齧ってみれば、なぜ日本国内でも取り組んでいるラボがあるのに、それを育てる、或いは一緒に取り組むと言う気持ちではなく、国内技工が滅びる事を前提に、一足飛びに中国に飛びついちゃうのは何故かなと。
安く提供したいのであれば、自費でと言わず、保険制度に収載するように働きかければいいのでは。
歯科医師の取り分だけはしっかり確保したまま、それ以外は患者さんも歯科技工士も負担を強いられるがままでしょうか。 皆保険で国民のだれもが受け入れられるホテツを目指す訳でもないのでしょうか。
Posted by: G3 | May 07, 2010 02:35 PM
なぜ中国とだって?
理由は簡単だ。向こうとやった方が自分の臨床がレベルアップできるからだ。
日本の保険制度とか技工業界の改革はもっとえらい人達がやるべきことでしょう。
Posted by: 篠田鉄郎 | May 08, 2010 07:15 AM
ヨーロッパの最新技術を日本よりずっと早く取り入れることができる。
技工料も安く、再製もそれほど文句言わず対応してくれるので失敗を恐れずチャレンジできる。
ジルコニアもAll on 4も日本に入ってくる前からやることができ他人より早く結果を評価することができた。
ジルコニアx、All on 4○
今はCAD/CAM技工だ。
それに日本でやろうとすると邪魔される。
Posted by: 篠田鉄郎 | May 08, 2010 02:13 PM
篠田先生
邪魔をするというのは、許認可の問題でしょうか?
それとも、医療制度上の問題でしょうか。
歯科技工所や歯科技工士が妨害をしていると言う意味なのでしょうか。
>>技工料も安く、再製もそれほど文句言わず対応してくれるので失敗を恐れずチャレンジできる。
確かに歯科医師としては、こう言うような条件であれば、チャレンジしやすいでしょう。
しかし、歯科技工所の方の立場で、このような条件を受け入れるには、相当なコストと無報酬での労働時間とを勘案せねばなりません。
それとも、それは歯科技工所や歯科技工士なら当然の条件だと言う事なんでしょうか。
Posted by: G3 | May 08, 2010 05:29 PM
邪魔をするのはまず日本独特の流通経路の連中だ。メーカー、代理店、卸、材料屋。安く直販しようとすれば邪魔される。
最新の機器を輸入しようとすれば旧型の在庫を抱える輸入代理店や開発できない国内メーカーに邪魔される。
商業誌もメーカーや講習会屋とつるんでいるので宣伝もままならない。
「高齢化で義歯の需要が増えるはずなのに仕事が減ってる。」 歯科医のせいではないよ!今の年寄りは快適な生活に慣れている。保険のデンチャーなんて入れたくない、いや入れられない人が多いんだ。それに年齢に関係なく銀歯なんて入れられたくないんだ。
この50年間、日本人の生活はどれだけ豊かになったと思う。なのに保険の補綴は50年前と同じだ。こんなことやってたら世間から見放されても当たり前だ。歯科の衰退は当然の結末だ。
私が中国のラボに優遇されてるのは始めてそのラボに来て個人で注文した外国の歯科医だからだ。6年前の事だ。それに私は中国国内のプロモーションに協力している。
あなたは年はいくつですか?私はもうすぐ53だ。もう歯科医としてそんなに先が無い。今さら大もうけしたいわけじゃない。10年前は保険医協会の役員として保険診療の充実のために本気でロビイ活動をした。しかし某政党の運動のための運動に利用されただけだった。政治も業界団体もダメなら個人で何とかするしかない。
Posted by: | May 09, 2010 03:19 PM
最後に一言、「本気で技工を続けたいやつら文句ばっか言ってないで俺と一緒に中国へ行け。そのほうがよっぽどましだ。」
「日本人の技工士がCAD/CAM使ってBEGOとセラムコで中国で歯作れば文句無いだろ。」
Posted by: 篠田鉄郎 | May 09, 2010 03:38 PM
篠田先生>
私も同年輩ですよ。
安い労働力がふんだんにあって、海外からも資本を呼び込めた中国の大手ラボのような展開は、日本のラボや歯科技工士にはおいそれと出来る事ではないでしょう。
技工所経営の面で言っても、受注が見込めないものに、過大な投資は出来ないと思います。
>>保険の補綴は50年前と同じだ。こんなことやってたら世間から見放されても当たり前だ。歯科の衰退は当然の結末だ。
同意です。
国民に対して、技術の進歩を還元してこなかったのは、歯科医療者の我々です。
同時に、出来ないのなら何故かを国民に伝える地道な取り組みも必要です。
国が手も足も出せないから、法の隙間をぬってやるなら文句が無いだろうと言うのは、乱暴かと思います。
一部の人にとっては、それで事足りるのかもしれませんが、篠田先生が酷いと言う、50年変わらない歯科医療と保険制度がそのままでは、何の意味も持たないではありませんか。
Posted by: G3 | May 09, 2010 06:40 PM
定遠の陳さんは93年までは台北で4~5人でラボをやってた。無資格者の奥さんも手伝ってた。休みもなく毎日夜中まで仕事していたそうだ。
歯科医に買い叩かれてどうにもならなくなって大陸に移転、金がないのでとんでもない辺鄙なところにしか土地を借りれなかった。ついて来た台湾人は一人だけ、素人の中国人20人を雇って教えながらまた毎日徹夜で仕事して台湾に送り返したそうだ。
当時、台湾でも今の日本と同じように中国製技工物はボロクソ言われて排除されようとした。中間業者とのトラブルも多かったようだ。ヨーロッパの仕事と大陸の内需で規模が拡大できたので、陳さんは台湾の仕事は全部切ったそうだ。
日本の技工士も少なくとも10年前に進出すべきだった。もう遅い、日本人だけではなんともならない。
乱暴とも法の隙間とも言われても私のような何の権威もない場末の開業医にできるのはそんな方法しかない。もう日本の歯科医や技工士がみんな良くなることはない。技工士のなり手もいないのに、パートのおばさんに模型作らしたら違法?家族に研磨手伝ってもらったら違法?50年前の法律を盾にして既得権を守ろうとしてさらに自分の首を絞めているように見える。
歯科医師の資格さえ地に落ちた今、全国統一でもない試験、医療職?として最低年限の教育課程の資格を主張しても行政が相手にしてくれない。少なくとも4年生大学にしとくべきだった。全てがもう遅い。
ただ保検制度という国営の仕組みに組み込まれているのに生活が成り立たないというのはひどすぎる。国は技工士の生活が保証できるような点数制度に改めるべきだ。しかしそれは私にできることではない。歯科医過剰は自業自得だ。
Posted by: 篠田鉄郎 | May 10, 2010 07:49 AM