歯科の棘を再考する。
歯科医療と歯科技工とを俯瞰するとき、見つめるべきところはどこなのだろう。
悲観論者の私からは、そも俯瞰するような高みからの視点は最初から無いのであるが。
みな歯科さんの4周年記念講演会が先日あったので、その内容の報告が公開されるのを楽しみにしていました。
その内容の一部が、今日の歯科ニュースやみな歯科HPにアップされていますので、皆さんもご覧ください。
記念講演の前半は岩澤さんの「歯科の棘を抜く」だったそうです。
その内容については、今日の歯科ニュースの記事をご覧いただくとして、それを読んだ感想や、改めて読み直した岩澤さんの「歯科の棘を抜く」から、感じた事を述べます。
私はみな歯科を2年ほどで離れてしまいましたが、学もなく底辺ばかり見てきた私には、元より理屈や議論だけで構築して行くには無理があったのだと思っています。
そんな私にしても、何かの論文を読んでみれば、何かしら感じるものはあります。
そう、喉にひっかかる、魚の棘のような感じで。
それに対する答えが、今回の講演で得られるものと期待していた。
岩澤さんは、歯科医師と歯科技工士の間に、或いは歯科技工士の間に棘があると言われている。
私もそれをいつも感じているのであるが、棘とは何かとの認識で差異を感じない訳にはいかない。
岩澤さんは講演の副題に「歯科社会の共通知 構築の為に」と掲げたそうだ。
棘が抜け、共通知が生まれた事を期待するが、現実はどうなのだろうか。
そしてまた、何故棘が生じ、対立が不信が起きた事に対しての言及や解は出されたのだろうか。
山本さんの記事を読む限り、棘が抜けたと言うには物足りないように思う。
また、解や対立者双方のそも、なぜ対立があるのか?棘と呼ばれるものがそれが「大臣告示」や「7:3問題」なのだと言うのであれば、それは何故その時代に出てきたのかと言う部分には、何一つ目を向けないからだ。
若い人たちには、そんなもの、生まれる前の話で、自分たちには関係も関心もないと言うのであろうが、ちょっと待っていただきたい。
若い人たちだけではなく、分かったように思っている人たちにも言いたい。
そも、棘とはなんぞやと。
岩澤さんの歯科の棘を抜くを、何度読み返しても、大臣告示をして、それこそが棘だと言いたいのだろうが、歯医者と歯科技工士の対立を認めていながら、大臣告示を巡っては、患者を置き去りにした、不毛な対立の棘だとしているんだな。
キメラの形相と喝破した対象は歯医者の事なんだろうが、歯医者に対しそれ以上の言及も考察もないのである。
いや、それ以上に歯科医師会や歯科技工士会の対立の根源、歯科技工問題、技工料金問題、歯科の差額問題などには何も目を向けないのである。
何度でも書くが、大臣告示は何もないところからポンと出てきたものではない。
それこそ、それが出る10年も20年も前から常に歯科医師と歯科技工士の共通基盤、共通の問題として昭和40年代の終わりから50年代にかけて、それこそ社会問題化し国会での歯科医師会会長や歯科技工士会専務理事の参考人招致にまでなった事なのである。
博学で、しかも日技や県技の役員を歴任した岩澤さんであればそれを知らぬ訳ではないだろうし、私と同じように当時、日本歯科医師会が発行した「歯科医療問題の展望」だってお持ちではないだろうか。
大臣告示のころの日技会長であった佐野氏が、専務当時の国会での証言や訴えとは裏腹に、日歯から口止めを貰い、日歯と橋本氏の圧力に屈したのであろうことは、当時の不可解な国会でのやり取りからうかがい知ることが出来る。
また、日技に残されていた手書きの議事録に、橋本氏などの国会議員を仲立ちとして、中医協委員、日歯執行部、日技の佐野とが密室の交渉を行っていた事が窺い知れる。
この議事録は、ある人の機転によって可視化され、加藤さんのブログにも掲載されていたから見た人も多い事だろう。
政治家や中医協の委員を仲立ちとして、日本歯科医師会と日本歯科技工士会とが交渉の末に出てきたものが昭和63年の大臣告示だった。
それを棘と言い、抜くと言うのはそもそも対立や、政治家、委員、官僚や業界団体が交渉し何らかの結論を出さねばならなかった原点を解消しなければならないのではないのか?
しかし、岩澤さんは今日の歯科ニュースの要約によれば、
>>「これを黙って怨念も入れずに読めばいいのだ。」
となるのだそうだ。
それはそうだろう。
歯科技工士の資格問題、技工料金問題、差額問題について、明確な解釈や対策、明文化立法化を恐れたのは何よりも当時の、いや、今もそうなのであろうが日本歯科医師会と言う組織と志井の歯科医師たちなのである。
そして、歯科技工士会の内部にも、既得権を失う事を恐れた人たちが居た訳である。
日歯はその持てる金と票とを持って、政治家を動かし、日技の執行部は膝を屈し、官僚はいらぬ責任を負わされるよりも、また、歯科医療問題と歯科技工問題が皆保険制度の新たな負担増とならないように、むしろ、大臣告示に保険点数が実勢価格を追随し、歯科医療費を低めに誘導できるのだと理解したうえで、大臣告示を持ち出したのだろうと思う。
少なくとも、その時点で、歯科技工問題は国会をも揺るがす社会問題として、国民も知るところとなり、共通知となっていたのではないのか。
それを国民不在の密室の議論として幕引きを図ったのはいったい誰たちであったと言うのであろうか。
みな歯科4周年記念公演では、棘は抜けたのだろうか。
時代背景も、国会論議も無視し、何もなかった事にして「これを黙って怨念も入れずに読めばいいのだ。」と読み解いて、理解は深まったのだろうか。
次があるのだろう。
棘も抜いた、感情的な対立も無くした、さあ、基盤を共通認識を作らねばならないとして、最初にくるのはなんだと言うのか。
私はそこが知りたい。
続報を期待したいところであるが。
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