歯科技工士の資格や業務範囲および歯科医師との関係について考える。
表題のシンポジウムが数年前にありました。
脇本さん、篠田先生、津曲先生がシンポジストとして参加されたものです。
その内容を読むことが出来ました。 ありがとうございます。
それを一読した今、歯科技工士の成り立ちや、その立ち位置というものを改めて考えたいと思います。
今思うのは、歯科技工士の資格や名称、肩書き、そして歯科技工士法そのものも、
歯科技工・士・という職業を選び、業に就いた人たちに対する壮大なまやかしではなかったのかと。
まやかしというのが悪ければ、
私たちやその先人たちは、名称と資格と法律が得られること、出来ることに、酔ってしまった、
ただそれだけで、自分たちの立場や境遇が変わると信じ込み、大きな幻想を見させていただけなのではないかと。飯塚さんの発言に、親の歯科医院に勤めていた技工士たちへの同情というか、哀れみの内容があります。
丁稚や奴隷と同等の存在だったのでしょう。
そもそも医者でもない、医者とは認められていない存在であった歯科医師、歯大工ですわな。
その歯大工の作業場に、住み込みで丁稚奉公する事が、どれほど大変だったことか。
歯科疾患という病に、手当てや治療を施すというのが歯科医療なのだとは思いますが、
手当てや治療はごく一部で、歯科治療といわれる行為の大半が、ホテツに費やされているのは、
昔も今もそれほど変わっていないように思います。今、歯科技工と言われる事の殆どは、歯科医師といわれる人たちの行う行為でした。
現在でも、ホテツホテツという状況に変わりはありません。
インプラントもオールセラミックスも、保険の義歯やクラウンブリッジも、病を直接手当てするということを指すよりも、
技工や作られるモノそのものを言っているのではありませんか。ラボワークとは歯科医師の行為そのものなんですね。
歯科技工士とはその歯科医師のラボワークを代行していると言えば聞こえはいいのですが、
立場としては「手伝い」に過ぎないのだと。奴隷同然で丁稚奉公するような境遇にあった先人たちが、力を集め、仲間を募り、結束して資格を勝ち取った、
歯科技工士法という後ろ盾も得たと言えば、いかにも良かった事のように見えるのではありますが。しかし、それによって歯科技工士なる名称と資格と法律の後ろ盾を得た者たちは、
いったい何を手に入れたというのでしょうか??
歯医者の手伝いという立場や行為、変化は無く、
労働行為や労働時間に対する対価が変化した訳でも無く。
いったい、歯科技工士という肩書きや法律が、手伝いのものたちに目立った恩恵をもたらした部分があったというのでしょうか。
手伝いという立場のままに、資格という肩書きや法律の後ろ盾を得たところで、手伝い人そのものには、何の変化も得るものも無く、ただ、手伝いの立場だけが固定されたというのが、国家資格や歯科技工士法を得た結果だったというのが現実だったのではありませんか。
歯科技工士は独立した資格で、独立して業を行っているように見えますが、
業として技工の行為を労働として行い、ホテツ物というモノを作り上げていながら、
そのモノをお金に変える手段を持ち合わせていません。確かに、お金の流れはあるやのように見えますが、私たちの行為は手伝いに過ぎないわけですから、
私たちの行為を、その結果を直接お金に変えているわけではないのです。どんなホテツ物を作り出そうと、それをお金に変えることが出来るのは、歯科医師しか居りません。
歯科技工はサービス業か製造業かとの議論がありますが、
歯科技工士が歯科医師の手伝いに過ぎない現状認識からすれば、
まさに、歯科医師へのサービスにこれ特化した、サービス業そのものだと言えるでしょう。
いや、業というのも虚しい、サービスそのものであることは、原価割れした料金、形だけの指示書、
無報酬再製や一方的な呼び出し、ただで提供する指示書と様々な無報酬での行為と、
例を挙げればきりが無いのです。歯科そのモノが医療でもなく、医療でもない歯科医師への手伝いサービスでしかない、歯科技工・士と言う国家資格のまやかし。
> 歯医者というのは医師に対して言わ
> れのない劣等感を持っている反面,技工士に
> 対しては言われのない優越感を持っている人
> が多いんです。たしかに技工士会に対して歯
> 科医師会が邪魔をしてきたということは言え
> るでしょうね。歯科技工士になったからといって、何故に私たちは一段低く見られねばならないのでしょうか?
歯科技工士がまっとうな要求をしたら、何故不逞の輩と罵倒されねばならないのでしょうか?
そう言う状況、立場からの脱却を願ったはずの歯科技工士資格、歯科技工士法の成立であったはずが、
飯塚さんが発言されているように、状況も立場も何も変わってはいないのですよ。歯科技工士は製造業でありながら、その商品をさばく手段は歯科医師へのサービスでしかあり得ない。
それがわかっているからこそ、歯科医師たちは何か言う前に優越感に浸れるのでしょう。
国家資格や法律があるからこそ、歯科技工士は守られているのではなく、歯科医師へのサービス業に閉じ込められているというのが、国内での歯科技工士の現実だと思います。
縮小し衰退が明らかになりつつある、歯科と言う業界において、
歯科技工士は個人であろうと、ラボであろうとも歯科医師へのサービスに過ぎないのですから、マーケットは限られている上に価格の決定権もほぼ奪われた状態です。
サービスする内容についての決定権も、参賀する立場も与えられず、歯科医師会や歯科機材メーカーや商社、そして学会が決めた内容について、ただただ言われるがままに受け入れざるを得ないのが、歯科技工という業であり資格なのでしょう。
私たちがリスクやコストでモノを言うことは殆ど出来ません。
言われるがままに他の人たちが決めたことを、さもありがたい事のように受け入れることしか、今の歯科技工士には道がありません。そんな歯科技工士の立場や資格の本質が理解できた人たちは、
さっさとこの業から離れていっているのでしょう。将来、歯科技工士が居なくなるというような警鐘を唱える人たちに、何故居なくなるのかを問うてみてください。
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Comments
これは“誰”の発言録なのですか?
Posted by: 一読者 | January 16, 2013 07:54 AM
当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
更新が止まってほぼ1年。
今更歯科技工士に執着することもなく、業としての技工の依頼があれば淡々とこなすのみです。
今頃、コメントに返答しても遅いのかもしれませんが、最近になっても少しですがアクセスがあることを知って、技工にこだわらずに何か話題を紡いでいこうかなと思っている所です。
わざわざ枠内に収めたため、誰かの一文を掲載したように見えてしまいますが、
たしかこれは、私がメーリングリストに流した一文を、このブログに転載したのだったと思います。
Posted by: G3 | May 09, 2014 03:05 PM