案外、普及は早いのかも。保険の削りだしハイブリッド冠
少し前の記事で、保険収載されたCAD/CAM削り出しのハイブリッド冠、CAD/CAM冠に、どのくらいの需要が発生しているのか気になると書いたんですが、加藤さんの表部屋に関連する記事がアップされていました。
これを読むと、結構な数の需要が発生しているのがわかりますね。
ひと月で300本。
素材のブロックがシェードによってはメーカー欠品になっていて、供給が追いつかない状況だというのですから、歯科や技工業界にとっては久々のヒット商品(この表現はおかしいかな)になったわけです。
欠品については、同じようなことをていね社のブログでも見かけていますから、メーカーは対応に追われているのでしょう。
患者さんによっては、形成と印象を終えたまま、数ヶ月待たされるようなこともあるのかもしれません。
早く行き渡ることを願っています。
さて、実際にCAD/CAM冠の受注に乗り出すとして、後発のラボはどう対応すればよいのでしょうか。
加藤さんの記事によれば、下請けは許されていないと言いますが、やはり、一人ラボとしては高額な歯科用CAD/CAM装置をポンと導入するわけにも行かず、再委託をするのが現実的な対応なんですが、それが禁止されている以上、様子を眺めるしか無いのかもしれません。
ネット上では、汎用のCAD/CAM装置や3Dプリンターを使った造形のポータルサイトもどんどん出来ています。
それらのサイトが稼動させている装置は、歯科用に認可された装置よりもよっぽど最新で高性能なものも少なくありません。
厚労省と薬事法の縛りがなければ、そちらの方でも十分対応可能なのだろうと思います。
そして、価格的にもそちらのほうが市場価格を反映するのだろうと。
今は、一部のラボが謂わば特需に湧いているCAD/CAM冠ですが、ずっとその状態が続くのかといえば、甚だしく疑問です。
和田精密さんなどは、福島県に歯科用CAD/CAM装置を100台も設置した工場ともいうべき技工所を立ち上げるとか何かで目にしましたが、そういうのがあちこちに出来れば、あっという間に供給側が飽和状態になりそうですね。
加藤さんも記事のまとめで
その受注と生産量の均衡が破られたときに、価格は下がり出す。特に機械装置でできあがる補綴物なら価格は急激に低下するだろう。また高分子化合物の材料原価は安く、金属と違い価格を下げることは可能である。
と述べています。
更に続けて、
一通り価格が安定すれば、点数の引き下げを行うだろう。
と予想しています。
私も同じように感じています。
需給の飽和と、新たなるダンピングの発生が、早ければ次の改定を待たずに始まってしまい、次回改定での点数の見直しに影響してしまうのではないかと。
歯科業界からは、多分、次は小臼歯だけの適応である現状から、前歯や大臼歯への適応範囲の拡大が要求されるだろうし、複数歯に渡るケースも認めるような要望が出てくるはずです。
厚労省の目的が、歯科医療費の大きな割合を占めている金属代金の抑制にあるのであれば、適応範囲の拡大はもしかすると既定路線かも知れません。
そこで、点数が高いまま適応範囲を拡大するのは、需要増をみ込むと好ましくないと考える厚労省官僚もいるのじゃないでしょうか。
小出しに認可して、例によって例の如くのダンピング競争が起こるのを待って、料金が下がった所で認可範囲を広げていく。
終わってみれば、一人ラボの淘汰は進み、ラボの大型化、歯科医院での内製化が当たり前になって行くのかもしれません。
歯科医院からすれば、自費にでも保険にでも対応できる歯科用CAD/CAM装置を、1台導入するくらいのことは、CT装置を導入するよりも費用もかからないし、利益を出しやすくなるかもしれません。
トータルすれば、厚労省だけが歯科医療費の抑制に成功し、割りを食うのは増えすぎた歯科技工士、一人親方たちということになってしまいそうですね。
いや、既に、もうそうなっているなと実感している者が、ここにいるということで。
追記
しかし、事はそんな単純な問題じゃ無さそうです。
次は、歯科医療費改定に仕組まれたトリックについて、穿った見方をしてみたいと思います。
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